皆既月食

皆既月食が見られると報道された日の朝、全盲の友人からメールが届いた。
「今夜は皆既月食です。お月様が欠けてなくなり、また現れるそうです。赤いお月様
になるそうです。綺麗ですね。」
別の友人から届いたメールにも皆既月食のことが書いてあった。
「お月様が赤くなるんだって。お空に梅干しがある感じかな。きれいだね。」
メールを読み終えた僕はクスッと笑って幸せになっていった。
皆既月食なんて見えない僕達には無縁と思われがちだ。
確かに実際に見るということはできない。
それでもこうして語り合っているのが事実なのだ。
不思議な事実なのだ。
そこには悲しみがあるわけではない。
苦しみがあるわけでもない。
淡々と受け入れていく心が存在するのだ。
見たくないと言えば嘘になる。
見たいと言う思いを消し去ることはできない。
でも見ることができないから無縁というものではないのだ。
人間の心の柔軟さなのかしたたかさなのか、両方かもしれない。
そしてそこにささやかな幸せがあるのもまた事実なのだ。
(2022年11月11日)