地面に膝をついて這いつくばる。
目線を地面に近づけてそっと右手を前に出す。
それから掌を下にして地面すれすれを動かす。
右から左、前から後ろ、ゆっくりゆっくり動かす。
掌の触覚が地面とは違うものを見つける。
今度はそれを人差し指の腹でそっと触って確認する。
やっぱりあった。
チューリップの芽だ。
秋の終わりの頃に植えたものだ。
そろそろだと思ってた。
見つけた芽を指先が幾度も撫でる。
自然にそっと愛おしそうに撫でる。
うれしくてたまらなそうだ。
指先の喜びが僕に伝染する。
生まれたての春を撫でる。
瞬間をしみじみと幸せだと思う。
そしてまた飽きずに撫でる。
春がきた。
(2023年3月1日)