10年の時を超えて

彼女が高校生の時、当時僕がよく利用していた桂駅での出来事だった。
駅で困っていそうだった僕に彼女は声をかけてサポートしてくれた。
河原町行の電車に一緒に乗車したとのことだった。
そして僕は『ありがとうカード』を彼女に手渡した。
僕にはその時のしっかりとした記憶はない。
毎年、いろいろな場所でいろいろな人にサポートを受けて生きてきた。
『ありがとうカード』を受け取ってくださった人は計り知れない数だ。
老若男女、たまには外国人の方もおられた。
すべてに感謝しているがそのほとんどは記憶はない。
これは画像のせいだと思う。
しかもサポートを受けた時間はほとんどが数分程度だ。
声だけで記憶することはできない。
そして、彼女ともそれ以後出会う機会はなかった。
彼女は大学では社会人類学を学び、カナダでワーキングホリデーをしたり、バックパ
ッカーで世界中を一人旅したりしたらしい。
行動力のある人だということは伺えた。
様々な文化や価値観に触れながら、夢を育んでいったらしい。
夢はいろいろな立場の人達が癒される社会につながる内容だった。
その夢の途中で僕を思い出してくれたとのことだった。
約10年ぶりの再会となった。
僕達は地下鉄の駅の改札口で待ち合せた。
昔からの知り合いみたいに、彼女のサポートを受けて歩いた。
何の違和感もなかった。
近くのカフェで歓談した。
彼女の夢に僕が貢献できることはほとんどないかもしれない。
でも、まさにマイナーな僕達のことも考えてくれたという事実がうれしかった。
悲しい暗いニュースが世界を席巻していっているように感じる時がある。
報道に接して気分が重たくなることも増えたような気がする。
だからかもしれない。
キラキラとした目で未来を語る人達に出会うと幸せになる。
心から拍手を送りたくなる。
そして僕自身はもう若くはないが、いつまでも夢を語れる人でありたいと願う。
(2024年3月2日)