春の始まり

啓蟄も過ぎた。
僕は作業着に着替えて庭に出た。
決して広い庭ではないが僕には十分だ。
今朝の気温は5度、まだまだ暖かいとは言えない。
庭のあちこちを歩いて数か所で腰を降ろした。
そしてゆっくりと地面に触れた。
触るということは僕にとっての見るということだ。
冬の間に積もった枯れ葉も残っていたが、あちこちから雑草が芽を出していた。
触れる度に指先はうれしそうに止まった。
数センチに育っているものもあった。
その強さと逞しさにはいつも感動する。
弱虫の僕はその姿に憧れてしまう。
深呼吸をしたら今度は耳が喜んだ。
ウグイスの鳴き声だ。
しかもまだまだ半人前の鳴き方だ。
頑張れってつい思ってしまう。
下手っぴの声の方が聞き入ってしまうから面白い。
神様のさりげないおもてなしはいつも凄いと思う。
笑顔になって空を見上げた。
空を見上げると無意識に空を見つめてしまう。
自分でもおかしいと思うが何故か閉じている瞼を開いてしまうのだ。
自分の無意識の行動がちょっと照れくさくなる。
そしてやっぱり考えた。
戦争が終わって、世界が平和に包まれますように。
何もできない自分自身の無力さが淋しい。
でも、とにかく春が始まった。
僕は感謝の気持ちを持って、この春を享受していきたい。
(2024年3月7日)