阿久根の海にて

阿久根の港、
防波堤に腰を下ろす。
東シナ海に向かって腰を下ろす。
波の奏でる音楽が僕を包む。
漁船のエンジン音がパーカッションだ。
時々聞こえる海鳥の鳴き声は、
金管楽器だろうか、
丁度いいアクセントになっている。
少年時代に見ていた風景が、見事に蘇る。
見えなくなって15年、
もう自分の顔さえ思い出せないのに、
この風景は、灯台の錆付いた色合いまでをも記憶している、
僕にとっては、一枚の絵だ。
青色、水色、紺色、どれを使っても表現しきれない、海色。
思い出すだけで、心が穏やかになる。
思いっきり空気を吸って、
ゆっくりとはきだす。
存在している自分自身に、自然に感謝する。
生きていること、感謝する。
(2012年11月18日)