糠漬け

一人の声はなかなか届かない。
皆で声を出せばそれは一定の力となる。
だから障害者も団体で活動することが多くなるのだろう。
僕が入会している大津市視覚障害者協会もそのひとつだ。
会員は100人程度だ。
大津市在住の視覚障害者は1,000人程度らしいので1割程度の人が入会しているとい
うことになる。
僕が長年関わった京都府視覚障害者協会の会員は1,000人程度だった。
京都府在住の視覚障害者数は10,000人程度だったから組織率は同じくらいということ
になる。
時々、そんなに少ないのと問われることがあるが、障害者団体の組織率としては高い
方だと思う。
大津市視覚障害者協会は滋賀県視覚障害者福祉協会に所属している。
滋賀県視覚障害者福祉協会は日本視覚障害者団体連合に加盟し、日本全体の視覚障害
者の声となっていくのだ。
団体に入会すれば、楽しい行事などもある反面、会議や社会への活動も多くなる。
会費も時間も必要だ。
僕達も当然人格を持った一人の人間だ。
思想、信条、宗教、政治的なイデオロギー、それぞれだ。
時には激論もあるし考えがぶつかることもある。
それでもそこで進むべき方向を確認していく。
一番分かりやすい答え、それは未来の後輩たちの笑顔につながるかどうかということ
だろう。
大津市に引っ越してきて4年目となった。
例年通りに、大津市視覚障害者協会の総会の案内が届いた。
僕もスケジュール調整がうまくいったので参加した。
ちょっとだけ慣れてきた感じだ。
昼食のお弁当の時、ぬか漬けの上手な会員さんからお裾分けを頂いた。
確かにおいしかった。
帰り際にその会員さんに声をかけた。
「糠漬け、おいしかったです。また来年も楽しみにしています。」
僕は日常のレクリェーションなどにはなかなか参加できない。
彼女とお会いできるのはこの総会の日だけだろう。
つながっているのは視覚に障害があるということだけだ。
細い細い糸、そして強い強い糸。
それはお互いの人生に思いを寄せ、未来を見つめる見えない見えにくい人達の糸だ。
大切にしたい。
来年もまた糠漬けに会えますように。
(2025年5月31日)