駅のホームを白杖を使ってソロリソロリと歩いている僕の姿、きっと不安がにじみ出
ているのだろう。
本当は背筋を伸ばしてさっそうと歩きたいとは思っている。
でもやっぱり怖さには勝てない。
足元の点字ブロックを白杖の先でさぐりながらソロリソロリと歩いてしまうのだ。
そんな僕に気づいた人が時々声をかけてくださる。
「お手伝いしましょうか?」
「改札までご一緒しましょうか?」
うれしい声だ。
遠慮せずに好意に甘える。
ただ僕をエレベーターに案内しようとされる人が多い。
「階段をお願いします。」
僕は階段の方がいいのだ。
それなりの理由がある。
日常、単独の時はいつも階段を使っているので、階段につながる地図を憶えている。
階段は小鳥の声の音声が流れているので自分で見つけられる。
エレベーターは基本的に音声案内はない。
探すのも大変なのでエレベーターにつながる点字ブロックは分かっていない。
エレベーターを降りてから改札口に向かうルートもあまり自信がない。
単独の時、何故エレベーターを選ばないのか、他にも理由がある。
エレベーターに乗る時、僕だけなのか、他にも利用者がおられるのかは分からない。
車いすの方、ベビーカーの方、最近はキャリーケースの旅行客も多い。
それにぶつかったりして迷惑をかけたくない。
知らずに順番抜かしをしてしまう危険性もある。
たまたま単独で乗っても、ボタンを探したりしなければいけないこともある。
階段よりはちょっとハードルが高いということになる。
結局単独の場合は階段を利用するということになるのだ。
階段を利用してのプラス面もある。
基本的に運動不足の僕にとっては健康作りのひとつになっている。
自分の体調を感じるバロメーターにもなっている。
朝の出勤時、調子がもうひとつの時は平衡感覚がもうひとつなのが分かる。
そんな日はスピードを落とすとか耳を澄まして動くことを心がけている。
見えないで歩くということ、やっぱり大変なことなのだ。
慣れてはいるが、慣れ過ぎたらそこに危険が横たわっているのは分かっている。
そう考えると駅のホームなどでの声は本当に助かるのだ。
声をかけてもらえるのは20回に1回くらいかな。
この回数をもっとよくすること、僕の活動の目標のひとつかもしれない。
声をかけてくださった人に心をこめて「ありがとうカード」を渡している。
(2025年6月4日)