妄想

自分の部屋の前を朝顔のカーテンで日よけをしたいと思った。
義弟に相談したら、息子も呼び寄せて立派な棚を作ってくれた。
僕はその下にプランターを準備して朝顔の種を蒔いた。
子供の頃、夏になると家の前の竹垣には朝顔の花が咲いていた。
その種を蒔くのは僕の仕事だった。
だから朝顔には自信があった。
コップの水に一晩浸しておいた種をプランターに蒔いた。
一粒ずつ丁寧に蒔いた。
数日後、予定通りに芽を出してくれて喜んでいた。
そしてまた数日して、何本かの芽が出そろったのを確認していた。
4日間ほどの出張から帰ってきて、何より先にその朝顔を触った。
愕然とした。
茎だけが残っていて、葉っぱはほとんど全滅だった。
何が起こったのか分からなかった。
どうやら虫に食べられてしまったらしかった。
朝顔の葉っぱを食べる虫がいるらしいことを姪っ子が調べてくれた。
しばらく気持ちが落ち込んでいたが、棚を触って決心した。
このままでは棚が淋しそうだ。
僕は再度挑戦することにした。
リベンジだ。
今回はまず虫よけの薬をプランターの土の上においた。
それから数日してから種を蒔いた。
これまでと同じように一晩水に浸しておいた種だ。
気温が高くなっていたせいか、前回よりも早く発芽した。
それから毎日触っている。
現時点ではすくすく育っている。
やっと本葉も出だした。
ここまできたら大丈夫だと思う。
夏の日の朝、僕の部屋の前にはたくさんの色とりどりの朝顔の花が咲いている。
想像しただけでうれしくなる。
空想を超えて妄想かもしれない。
こんな時の僕は子供みたいだと自分で思う。
でもこの単純さは夢を見るには適しているのかもしれない。
くじけてもくじけても夢を見る。
短所は長所にもなるのだ。
朝顔、楽しみだ。
(2025年6月9日)