「松永さんの本、文化放送のラジオで紹介されたらしいよ。」
視覚障害者の友人からの情報だった。
僕は目が見える友人に確認をお願いした。
事実だった。
5月に文化放送のロービジョンプロジェクトで数回紹介されたらしかった。
番組のオフィシャルページに掲載記事があったらしい。
担当者がたまたま新宿の紀伊国屋書店で僕の本を手に取ってくださったのだ。
昨年末に出版された「あきらめる勇気」だった。
そして、その流れで「風になってください」も読んでくださり、それも紹介されてい
ることが分かった。
こういうことを奇跡というのだろう。
僕はこれまで4冊の本を書いた。
多くの新聞、雑誌、ラジオなどで奇跡があった。
朝たまたま聴いていたラジオで有名なパーソナリティの方がいい本だと紹介してくだ
さった時には飲みかけていたコーヒーをこぼしそうになった。
勿論、そのパーソナリティの方と面識はなかった。
サンケイ新聞の一面のコラムで紹介された時も、たまたま目にした読者の方に教えて
もらった。
どういう経過で実現したのかは知らない。
週刊誌や月刊誌でもそういうことがあった。
ある公立大学から突然封筒が届いたこともあった。
一部を入学試験に使用した旨の報告だった。
幸運な奇跡だった。
振り返ると、そういう幸運に多く恵まれた。
心からありがたいことだと思う。
本を書くようになった時のことをふと思い出す。
たまたま僕のメールを読んだボランティアの女性から本を書くことを勧められた。
彼女は元大手の出版社で働いていたという経歴を持っておられた。
しぶる僕を彼女はとても真剣に説得された。
「貴方が目指す社会の実現のために、活字はきっと大きな力となってくれるわよ。」
僕はその言葉で初めて首を縦に振ったのだった。
僕より一回りくらい年上だった彼女はもう数年前に天国に逝かれた。
「だから、そう行ったじゃないの。」
彼女の声が聞こえそうな気がした。
僕は合掌した。
そしてありがとうございますを呟いた。
先日もたまたま出会った群馬県の方が図書館で借りて読んだとおっしゃった。
初めて耳にした地名だった。
図書館にあれば、誰かが読んでくださることがある。
読んでくださった人は、僕達のことを想像してくださるかもしれない。
見える人も見えない人も見えにくい人も、皆が笑顔で参加できる社会につながってい
く。
このブログを読んでくださった方、地元の図書館にリクエストしてみてください。
きっと、奇跡は続いていきます。
(2025年7月26日)