京都市内にある小学校の福祉授業に出かけた。
京都五山の送り火のひとつ、妙法の山すそにある小学校だ。
ここの校長先生は担任をしておられた頃に出会っている。
僕のことを憶えていてくださっているのだ。
そして僕が子供達に出会う機会を作ってくださる。
そういう校長先生とか教頭先生とかが結構おられる。
それだけ長い時間活動を続けてきたということだろう。
とにかく有難いことだ。
今日は6年生が対象だった。
40名くらいの子供達、一生懸命に話を聞いてくれた。
僕の問いかけにも素直に答えてくれたし、質問もしてくれた。
学び合うというのは不思議な力を持っている。
教室の空気がどんどんやさしくなるのだ。
あっという間の2時限の授業だった。
教室を出て帰ろうとした時だった。
一人の男の子が追いかけてきた。
「僕、誰かを助けられるような人になります。」
少年の声は少し涙ぐんでいた。
真剣さが伝わってきた。
もう一人の女の子は握手しながらつぶやいた。
「お話を聞けて良かったです。」
6年生くらいになると心はだいぶ大人に近づいているのだろう。
メッセージをうれしく感じた。
学校の最寄り駅から地下鉄に乗車して帰路に着いた。
途中で乗り換えてJR山科駅までの30分、ずっと立ったままだった。
この時間帯だったらどこかの席がきっと空いているだろう。
手すりを持って立ったまま、やはりちょっと悲しかった。
山科駅から湖西線の電車に乗り換えた。
地下鉄と同じようにいつものように、僕は入り口の手すりを持ったまま立っていた。
「車掌ですけど、お座りになられますか?」
若い車掌さんの声だった。
これまで別の私鉄などで幾度かの経験はあったが、JRのこの路線では初めてのことだ
った。
「座りたいです。うれしいです。」
僕は車掌さんにサポートしてもらって座った。
幸せだなと心から思った。
電車に揺られながら、さっきの少年を思い出した。
きっとこの車掌さんみたいな人になってくれるだろう。
そんなことを考えていたら、幸福感が2倍になったような気がした。
12歳と過ごした時間、いい時間だった。
(2025年9月4日)