お招き頂いた稲荷小学校は最寄り駅はJRの稲荷駅だった。
伏見稲荷の最寄り駅でもあった。
伏見稲荷の参拝者数は一年間に一千万人くらいらしい。
京都を訪れる外国人旅行者にも一番の人気だということは知っていた。
小学校に行くには、京都駅で湖西線から奈良線に乗り換えなければいけない。
これは結構距離があるし、電車も観光客で込んでいるのが予想できた。
僕は単独で行くのをあきらめて駅員さんにサポートをお願いした。
京都駅での乗り換えで、僕の判断が間違っていなかったことを痛感した。
超がつくほどの満員電車だった。
駅員さんはもう自分は乗ろうとせずに僕だけを乗せてくださった。
そしてホームから、乗り込んだ僕の手を手すりに誘導してくださった。
なんとかドアが閉まり電車は出発した。
僕はまるで木に停まったセミのようにしていた。
一つ目の駅は東福寺だった。
ほんの少しの乗客が降りていかれた。
この季節、東福寺も紅葉が美しいのだろう。
稲荷駅では駅員さんが待機していてくださった。
「この状況ですから、点字ブロックの上を少しずつ進みますね。」
駅員さんはそうおっしゃりながら動かれた。
駅は古くてホームの幅も広くはないらしかった。
まさにホームから人がこぼれそうな感じだった。
聞こえてくる声はほとんどが外国語だった。
いろいろな国の言葉が聞こえていた。
駅員さんは時々英語で周囲に注意喚起をされていた。
ここでは日本語よりも伝わるのだろう。
わずかの距離、だいぶ時間がかかって改札口に着いた。
僕は本当に大変だった駅員さんに心からの感謝を伝えた。
改札口には校長先生が待っていてくださった。
校長先生は僕に肘を貸してくださって、人波の中を止まったり曲がったりしながら上
手に歩かれた。
もう幾度もお会いしているので経験も信頼関係もあった。
「この道は通学路にはしていないんですよ。子供達には危な過ぎますからね。」
日本でありながら、外国人の方が圧倒的に多い空間で子供達は生活しているのだ。
不思議な感じがした。
4時間目に授業をし、子供達と一緒に給食を頂いた。
5時間目は保護者参観日で、たくさんの保護者も一緒に話を聞いてくださった。
6時間目は全学年の発表会があり、そこにも参加させて頂いた。
「いいとこ探し」というテーマで、クラスメイトのいいとこを探して発表するという
取り組みだった。
「友達のいいとこを探してうれしかったし、自分も探してもらってうれしかった。」
発表した子供達の笑顔が伝わってきて僕も笑顔になった。
子供達や先生方と過ごした時間、豊かな時間だった。
僕は満足して学校を出た。
込むのは辛いけど、世界の笑顔が溢れる街、それはそれでいいなと思った。
(2025年11月23日)