春風

休日の朝10時、僕達はライトハウスの中の小さな会議室に集まった。
京都府視覚障害者協会の部会だ。
たった5人の部会、15時半までの予定だ。
15時半というのは、
僕が次の会議へ向かうためのギリギリの時間。
時間いっぱい、僕達の現実と向かい合い、仲間の暮らしに思いを寄せ、
未来の社会を語り合った。
昼食は、近くの定食屋さんに行くことになった。
白杖をつきながら、
僕達は点字ブロックを頼りに歩いた。
信号を待つ数分間、
誰かがつぶやいた。
「春風。」
冷たくもなく、熱くもない、
ほどよい暖かさの風が、
気ままに吹いていた。
僕達を包んだ。
そして、誰が指示するでもなく、
僕達の目玉は、空に向かった。
ほとんど見えない目も、全然見えない目も、
空に向かった。
きっと人間は、空が好きなのだろう。
いや、未来は青空の向こう側にあるのかな。
(2013年4月14日)