さくらまつり

僕の地元では、今年も4月の第一土曜日、
恒例のさくらまつりが開催された。
そこでは毎年、地域のボランティアさん達と一緒に、
手引き体験コーナーや、点字体験コーナーを開催している。
僕も、都合がつく限りは参加している。
今年は、雨の中の開催になった。
戸外なので、さすがに参加者は少なかったけれど、
それでも、体験をしてくださる人達がいた。
待ち時間に、先天盲の友人が、お花見の思い出を話してくれた。
悲しいお花見の思い出だった。
もう50年以上前、彼女は兄弟達と一緒に、母親に連れられてお花見に行った。
桜の木の下で、お弁当を食べたりした。
用事で母親が席をはずした時、
周囲の大人達が話し出した。
見えない子供をどうして連れてくるのだろう。
見えなかったら、意味がないのに。
手がかかって大変だなぁ。
一言一言が、彼女に覆いかぶさった。
彼女は、その思い出話の後、昨日の外出のことを話した。
何人もの人が、「気をつけてね。」と言葉をかけてくださったのだそうだ。
「どこの誰かも知らない人達がよ。」
彼女は付け加えた。
そして、いい時代になったと、うれしそうにため息をついた。
僕は、失明してまだ16年、それまでのことはほとんど知らない。
ただ、先輩達の話を聞く度に、
社会が、確実に、成長していることを知る。
それを、成熟と言うのだろう。
本当に成熟した社会は、きっとすべての立場の人にやさしいに違いない。
そこまでは、まだまだだ。
雨降りだから休もうかと思った自分を、
ちょっと恥ずかしく感じた。
参加して良かった。
いろんな人が、それぞれの笑顔で集まれば、
きっとそれは、桜と同じくらいの美しさになる。
(2013年4月6日)