小鳥達のさえずり

午前5時55分、5階建ての団地の5階のドアに鍵をかけて、
今日の僕の一日がスタートした。
予約していたタクシーに乗り込むために、急ぎ足で階段を降り始めた。
たくさんの小鳥のさえずりが聞こえた。
いつもの朝は、もう少し遅い時間なので、
小鳥達のモーニングコーラスは終わっている。
眠い目をこすりながら、ちょっとだけ得をした気になった。
時々、東京での会議に出席するようになった。
今回は一泊二日、高田馬場の日本盲人会連合での会議だ。
10時から、昼食をはさんで18時までの会議、
明日もまた朝から、結構体力勝負だ。
交通費と宿泊費は保障されているが、
それ以外は自己負担になるし、日当もでない。
厳しい条件だけど、ささやかな使命感みたいなものが僕をささえている。
収入には結びつかなくても、大切な仕事もあるのだ。
それは、うれしい仕事だ。
ほんの少しかもしれないけれど、
仲間の力になれるかもしれない。
ちっぽけな自分という存在が、
誰かのためになれるとしたら、
それは間違いなく、幸せだ。
夜になって、あの朝の小鳥達のさえずりは、
「いってらっしゃい。」だったんだなと、ふと思う。
(2013年5月12日)