ウグイス

知り合いの和尚さんから電話があった。
知り合いと言っても、直接話しをしたのは、これで二回目だ。
一回目は、数ヶ月前、駅で声をかけてくださった。
和尚さんは、以前、僕が連載していた新聞のコラムを読んでくださっていて、
掲載されていた写真で、僕を知っておられたとのことだった。
だから、僕の名前を呼んで、声をかけてくださった。
そして、何度か見かけたけど、タイミングが合わなかったとおっしゃった。
声をかけてくださった理由は、
エールをおくっていると伝えたかったと、
ただそれだけとおっしゃった。
僕達は、握手をして別れた。
それ以来、二度目の電話だった。
たいした用事ではないんだけどと、ちょっと照れくさそうに前置きされた後、
和尚さんは、受話器を、お寺の周囲の竹やぶに向けられた。
しばらくの静けさの後、
「ホーホケキョ」
ウグイスの声が流れてきた。
それからまた、静かな時間が流れ、
二度目のウグイスの声が聞こえた。
そしてまた、時間は流れた。
時間と言っても、ほんの数秒だったのかもしれない。
その後、和尚さんは、今年は気候不順で、例年よりちょっと遅いけどと説明され、
ただそれだけとおっしゃってから、電話を切られた。
僕は、朝の始まりの空気の中で、
お勤めの後、受話器を竹やぶに向けておられる僧侶の姿を想像した。
美しいと思った。
誰かに何かを伝えるということ、
その何かがやさしい時、
伝えた側も、伝えられた側も、幸せになる。
そしてそれは、とても美しい。
そうやって、人と人とがつながっていけばいいな。
昨年の8月からスタートしたこのホームページ、
10ヶ月で、述べ5万人の閲覧者数となった。
このささやかなホームページを介して、
たくさんの人間がつながっていることを、
それぞれに祝福しましょう。
今朝のウグイス、あなたの心の耳にも届いたはずですから。
(2013年5月16日)