宝石

今日は、町家カフェさわさわの前にある下御霊神社のお祭りだった。
たくさんの露店が軒をならべた。
少女達は、綿菓子やカキ氷などを楽しみ、
宝石のつかみ取りを持ち帰ってきた。
片手ですくいあげた数をもらえるらしい。
6歳の女の子が、ひとつひとつを僕の手のひらに乗せる。
「これ何だと思う?当ててね。」
クスクス笑いながら、僕の指先を見つめ、僕の困った顔を楽しんでいる。
2センチくらいのプラスチックでできたようなものを、
僕は慎重にさわる。
匂いなどはないから、触角だけの勝負だ。
10歳の少女が、そっとヒントを出してくれる。
「果物だよ。」
僕が、「みかん!」
「ブー、色は赤です。」
「サクランボ!」
「ピンポーン!、じゃあ、次はこれ。」
僕はまたゆっくり、指先で確認する。
「これは花だよね。」
「近いけど、花じゃないよ。みどり。、しあわせ。」
少女の、ナイスタイミングの絶妙なヒントが重なる。
「四葉のクローバーかぁ。」
伝わる喜びが、少女と僕の間でほほえむ。
僕は、もう何度も少女と会い、一緒に歩いたりしている。
恥ずかしがりやの少女は、最初の頃はなかなか声も出なかったけれど、
今は、見えない僕にとっては、
声がどんなに大切なコミュニケーションツールなのかを理解してくれている。
手引きもとても上手になった。
そして、時々、素敵な映像を届けてくれる。
この前、買い物に行って僕を手引きしてくれた時も、
「あのね、青い空に飛行機雲が2本も残っているから、明日は雨だよ。」
子供の頃から、こうして一緒に過ごせば、
きっとそれぞれを理解できる。
そして、自然に助け合うことを学ぶ。
大切な教育のヒントがありそうな気さえする。
露店の宝石が、僕には素敵な宝石に思えた。
少女達は、きっと、内面から美しい
おしゃれな女性になるだろうな。
(2013年5月20日)