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テストの成績は良くない青年

突然、携帯電話が鳴った。
ついこの前のガイドヘルパー講座を受講した青年からだった。
彼は、介護福祉士を目指していて、
専門学校で僕の授業を受けた。
コンビニでアルバイトをしている彼にとって、
講座の受講料は決して安いものではなかったと思うが、
それでも、ガイドヘルパーの勉強をしたいと思ったとのことだった。
元々、学校の試験の成績も良くはなかったし、
講座の途中にも、幾度か先生方の注意も受けた。
最後までついてこれるか、少しは不安もあった。
でも、最終日に、僕は彼とたまたま歩いたが、
どんどん上達していっているのが判った。
一生懸命にやっているのが伝わってきた。
「僕、今日駅で、とても勇気がいったけど、
生まれて初めて、白い杖を持った人に声をかけて、
ちゃんと手伝いができました。
ありがとうと言ってもらえました。」
電話の向こう側には、照れくさそうに話す青年がいた。
小学校の頃から剣道をやっていたという、とても大きな体格の青年の、
体格には似合わない小さな声の少しの言葉が
青年の誠実さを伝えていた。
決して饒舌ではないけれど、受話口から、彼の素直な喜びがこぼれていた。
「僕も、いろんな人に助けてもらっているけど、本当にうれしいんだよ。」
僕は、彼にお礼を言って、電話を切った。
当たり前なんだけど、
学校の成績と人間の豊かさは無関係だと、
つくづく思った。
そして、僕がいつか老人ホームに入所したら、
彼のような人に介護して欲しいなと思った。
(2013年8月14日)