稲穂

草津駅での乗り換えも援助依頼をしていたのでスムーズだった。
終点の貴生川駅でホームに降り立った瞬間、気温が京都よりも数度低いと感じた。
改札口には教頭先生が待っていてくださった。
事前に何かで勉強してきてくださったのだろう。
サポートも快適だった。
車は30分は走り続けただろうか。
先生はいろいろな話をしてくださった。
のどかな田園風景も教えてくださった。
稲刈りが済んだ田んぼもあった。
小学校には全校生徒とたくさんの保護者の皆さんが待っていてくださった。
いつものように心を込めて話をした。
未来につながっていきますようにと願いながら話をした。
講演が終わってから校長室でしばらく歓談し、機会をくださったことに感謝を伝えて
学校を後にした。
午後から京都市内でのガイド研修の仕事が入っていた。
主催者が学校まで迎えにきてくださった。
食事の時間はなかったのでコンビニでおにぎりを買ってもらって車中で済ませた。
高速道路は空いていたが会場に到着したのはぎりぎりのタイミングだった。
そのまま講座が始まった。
実技も含めての研修だったので僕も一緒に外を歩いた。
ハードなスケジュールだった。
以前どこかで出会ったことのある受講生が名乗ってくださっても僕はほとんど分から
なかった。
毎年とても多くの人と出会うのだが画像はない。
そして何より、元々の記憶力が低すぎるのだ。
申し訳ないと思うのだが仕方がない。
講座が終了した後、一人の男性が僕の記憶のカギを開いてくださった。
珍しい職業をしておられた方だったので憶えていた。
今は障害者施設で頑張っておられるとのことだった。
希望と信念が伝わってきた。
うれしくなった。
握手をして別れるまでずっと控え目で誠実だった。
「実るほど頭を垂れる稲穂かな」
中学生の頃に好きになった言葉が蘇った。
朝の田園風景が重なった。
いい一日となった。
(2019年9月21日)