風景

僕が住んでいる洛西は1970年台に開発されたベッドタウンだ。
戸建ての住宅だけではなく、公営住宅などの多くの団地が街全体に並んでいる。
名称はニュータウンだがすっかりオールドタウンになってしまった。
たくさんいた子供達も成人して他の地域に出ていったのだろう。
高齢化率も高い地域となった。
街全体が歳を重ねてきたのだ。
ただ、それはマイナスだけではなくていいこともある。
例えば街路樹が成長した。
今、街全体が活き活きとした緑の中にある。
黄緑、緑、濃い緑、新緑に埋め尽くされている。
花が終わった桜の木には若葉が芽吹き葉っぱの間からは小さなピンクの実が顔を覗か
せている。
あちこちのつつじは赤、白、ショッキングピンク、まるで歌を歌っているようだ。
街路樹の根元では紫のかきつばたが微笑んでいる。
街全体が春から初夏に少しずつ衣替えをしている最中だ。
時折吹く風ものどかな肌合いだ。
呼吸するだけで気持ちが豊かになる。
ふと気づく。
見たことのない僕に風景がある。
自分でも少し可笑しくなる。
教えてくれる人がいる。
伝えてくれる人がいる。
いろいろな人との関わりの中で生きているということなのだろう。
ふっと空を見上げる。
真っ青なブルースカイ。
これは教えてもらったのではない。
僕の脳が想像したこと。
これも僕にとっては大切な目なのだ。
(2021年4月28日)