せみ

小田急新宿駅での実習を終えて高田馬場にある研修会場に帰る途中だった。
一匹のセミの鳴き声が聞こえた。
僕は耳を疑った。
まさかこんなところでと思った。
大都会の真ん中だ。
周囲にいた関係者に尋ねてみたが誰も聞こえたとは言ってくれなかった。
でも確かに聞こえたのだ。
僕にだけ聞こえるように鳴いてくれたのだろうか。
少し疲れ気味の僕にエールを送ってくれたのかもしれない。
ふと空を見上げた。
きっと東京も梅雨明けだ。
滋賀に帰ったら少しのんびりしよう。
うるさいと思うくらいにせみの泣き声を聞いてみたくなった。
(2025年7月20日)