キンモクセイ

ふと気づく。
曇天の日の昼下がりの微風。
微風は香りの空気の塊をそこに置くのだろう。
強い風邪だと飛んでいってしまう。
無風だと届かない。
自然は時々魔法使いだ。
キンモクセイと微風は仲良しなのかもしれない。
そこに僕も参加する。
草抜きをしていた手を止めて腰を降ろす。
少しだけ上を向いて目を閉じる。
目を開けても閉じても僕の目の前は変化はないのに不思議な行動だ。
自分でも可笑しく思う。
集中する気持ちがその行動につながるのだろう。
今時で言う全集中かな。
静かに呼吸する。
やがて深呼吸をしたくなる。
胸一杯に空気を吸い込む。
それから口をすぼめて少しずつ吐いていく。
脳が穏やかになっていくのを自覚する。
幸せを実感する。
そしてその瞬間、僕は平和に感謝する。
こうして見えなくてもここで生きている。
この社会で生かしてもらっている。
なんとなくそんなことを思う。
そして強く思う。
戦争が終わりますように。
(2025年10月17日)