柿の実

4年前に引っ越してきた家、庭に柿の木が一本ある。
その年、実がなったのか憶えていない。
憶えていないということはならなかったのかもしれない。
一昨年は少し実がなった。
食べてみて、結構甘いのに驚いた。
昨年は梅雨の後、実はほとんど落下した。
何かの虫にやられたようだった。
特別に薬剤の散布などはしなかった。
だからもう実はならないかもしれないと思っていた。
ところが違った。
今年はたくさんの実がなった。
梅雨の頃には心配したが、虫にやられることもなかった。
大きな実がたくさんなったのだ。
我が家だけではどうしようもないので近所の柿の好きな知人に取りにきてもらった。
先日訪ねてきた甥っ子もたくさん持って帰ってくれた。
それでもまだあったので収穫した。
脚立に上っての収穫は楽しかった。
大きな柿の実がとれた。
取ったばかりの柿の実を触っていたら、いつの間にか柿色を思い出していた。
思い出そうとしたわけではない。
脳の中で柿色が自然に蘇っていたのだ。
柿色が指先から脳に届いたのかもしれない。
オレンジでもピンクでもない柿色だ。
それに気づいたらうれしくなった。
失くしてもうあきらめていた大切なものが偶然見つかったという感じだった。
柿色は秋色だとしみじみと思った。
(2025年10月12日)