クリスマスカード

今年もまた1枚のクリスマスカードが届いた。
日本で販売されているようなお洒落なものではない。
普通の、いや普通よりは少し紙質は劣る紙に手書きしたものだ。
数名で書いてくれたらしい。
色鉛筆でいろいろな絵も描いてある。
「神様のご加護がありますように、心から願っています。」
書かれたメッセージには感謝の言葉とやさしさが溢れていた。
フィリピンのセブの子供達からのクリスマスカードだ。
セブでの生活を経験した日本人が小さな団体を設立されたのは、丁度20年前だった。
その時、たまたま僕もそれを知った。
セブには貧困の中で学校にも行けない子供達がいた。
ストリートチルドレンと呼ばれる子供達だ。
子供達はわずかな収入を得るために教会の近くの広場などで物売りなどをして日々を
過ごしていた。
その子供達に教育の機会をプレゼントしようという団体だった。
貨幣価値が違うので、一か月に1,000円で一人の子供を小学校に行かせることができ
るのだ。
2005年は僕の初めての著書「風になってください」が出版された翌年だった。
実は、その頃の僕は自分自身の生活にもまだゆとりはなかった。
見えなくなってから職業に苦労した。
単独歩行、点字、パソコンなどの訓練を受けて再度の社会参加にチャレンジしたのだ
けれど、社会には大きな壁が横たわっていた。
年収100万円を目標としてから5年目、まだそこを超えられずにいた時期だった。
とは言え、一か月に1,000円は生活に響くような金額ではない。
僕は喜んで参加した。
見えている頃、家族に恵まれない子供達に関わる仕事をしていた僕は、見えなくなっ
ても、何かの形で関わりたいという希望を持っていた。
見えなくなっていろいろな支援を受けながら、僕も僕にできることで少しでいいから
社会に何かしたいという思いもあった。
僕にもできることがあると実感できる活動だったのかもしれない。
僕はこの活動を続けることができた。
大学まで行きたいという希望の子供も出てきた。
流石に小学校の何倍もの費用がかかるのだが、僕の生活にも少しゆとりが出てきて対
応できるようになっていった。
クリスマスカードを手にしてふと思った。
僕は少しでいいから、セブの子供達の力になりたいと思って始めた活動だった。
けれど、活動を続けられる喜びみたいなものが僕のどこかにあったのだ。
社会に関わることができるという幸せなのかもしれない。
できる間は続けていきたいとしみじみと思う。

この活動にご興味のある方は、このホームページにリンクしてある、
02 NPO法人 イロイ・メモリアル・スカラーシップ(EMS)
を覗いてみてください。
(2025年12月25日)