僕が京都時代に暮らしていた京都市西京区に洛西寮という施設がある。
視覚障害者のための就労継続B型事業を運営している施設だ。
地域の西京視覚障害者協会はいろいろな会合やイベントでよくこの施設を利用させて
もらっている。
だから僕はもう25年くらい前からこの施設に出入りしていることになる。
そして10年くらい前からはこの施設でピアカウンセリングをさせてもらっている。
視覚障害者の僕が視覚障害の利用者の悩みを聞いたりするのだ。
冷静に振り返ってもたいしたことはできていない。
ただ、少しでも役に立ちたいという思いがここまできたのだと思う。
月に2回、対面で実施している。
とても慣れている建物だった。
全盲の利用者と廊下で立ち話をした。
楽しい話題で二人で思いっきり笑った。
それから別の部屋に動こうとして足を出した。
白杖を持っていたのだが、白杖より足が先に出てしまったのだろう。
そこは部屋に向かう廊下ではなくて下りの階段だった。
踊り場までの10段くらい、見事に落ちた。
スローモーションのように落ちながら咄嗟に身を守ることを考えた。
身体をひねった。
頭部を壁で打たないようにかばいながら落ちた。
背中が踊り場の床に叩きつけられた。
しばらくは動けずにひっくり返っていた。
微かに壁に当たった後頭部をそっと触った。
出血はないようだった。
それから手足がちゃんと動くかゆっくりと確かめた。
まだ運動神経は健在だったようだ。
打ち身はあったがけがはしてないようだった。
ひっくり返った姿勢のままでしみじみと思った。
僕は目が見えていないんだなぁ。
ゆっくりと立ち上がって、近くに転がっていた白杖を握った。
これが僕の目なんだ。
おろそかにしたらいけないとつくずく思った。
これが駅のホームなどで起こったらと考えたら背筋が凍るような気がした。
過信は禁物、慎重に歩いていかなくちゃ。
僕は目が見えない。
そう、僕は目が見えないんだ。
(2026年1月21日)