年度始め

アメリカ在住で一時帰国している日本人の友人と、
河原町駅で待ち合わせた。
春休みでもあるし、桜もいい感じらしいので、
観光やお花見目的の人達で、
ホームはごった返していた。
僕は、人の動きが落ち着いてから動こうと思って、
点字ブロックの上で待機した。
僕にぶつかりながら、白杖を無意識に蹴飛ばしながら、
たくさんの人が、僕を追い越していった。
僕はただ、いつもながら、凄い数の人だなと思って、人の流れが落ち着くのを待った。
ふと、僕にそっと触れ、英語で話しかける男性の声がした。
英語の判らない僕は、進行方向を指で指した。
彼は、僕の手に手を触れて、
肘を持たせてくれた。
何か話してくれたのだが、
プリーズ以外の単語は判らなかった。
階段を上る時も、通じたのは、お互いに交換したオーケーの単語だけだった。
それでも、何の問題もなく改札口に着いた。
先に着いて待っていてくれた友人に、
お礼を伝えてとお願いした。
勿論、友人は英語でペラペラとお礼を伝え、彼も答えていた。
それから、僕と友人は、加茂川へ向かって歩き始めた。
「さっきの外国人は、どんな人?」僕は尋ねた。
40歳代の黒人の旅行者だった。
あの混雑の中で、白杖の僕に気づいてサポートの声をかけてくれるのは、
彼が特別な考え方や意思を持っている人なのか、
彼が育った国が、豊かな国なのか、
僕にはどちらかは判らない。
でも、日本語が話せても、話せなくても、
僕達にサポートの声をかけてくれる外国人の割合が多いのは事実だ。
僕の愛している日本、もっともっと世界に誇れる素敵な国になって欲しい。
友人と加茂川の川べりに腰掛けて、桜を見ながら、加茂の流れを聞きながら、
穏やかな時間を過ごした。
日本では、今日が年度始め、
豊かな国の豊かな一人になれるように、
僕も頑張ろうと、静かに思った。
(2013年4月1日)